外国人と出張したある1日(5)
錦糸町を過ぎた。
総武線に乗っているから、秋葉原で山手線に乗り換えれば、すぐに御徒町だ。
彼には、御徒町までの移動ルートと所要時間を、おおまかに伝えた。
すると、彼は急にスマホをいじり始めた。
まあ、静かにしてくれるなら、こちらもラクだと思い、放っておいた。
数分後、いきなり真剣な表情で話しかけてきた。
「職場の同僚へのお土産を買いたい。」
えっ、今から?もう6時になるけど。
「日本らしいものを買いたい。」
日本人に聞かれてもわかんないよ!
「御徒町に着くまでに、どこかいい場所はないか?」
田舎者に聞くなよ!
どうも、もうお土産を買う時間が取れないらしい。
日本に着いて以来ずっと忙しく、明日は予定が詰まっていて、明後日は早朝の飛行機に乗るから、空港の店も開いていない。
なるほど、それなら今しか無いよね。
頭の中で状況を整理する。
どこかで寄り道をすれば、レストランに予約した時間に間に合わなくなる。
東京駅に向かうと、遠回りになる。
アキバなら、外国人が好きなモノがなにかあるかも。
秋葉原駅周辺で土産を探すことにし、レストランで待っている海外営業には、30分遅れると連絡した。
秋葉原で店を探すことを外国人に伝えると、生真面目な性格なのか、スマホで秋葉原駅周辺の土産物店を検索し始めた。
どうも、土産物を売ってそうな店が、駅周辺に3ヶ所あるそうだ。
彼が探した店を順番に巡る。
アキバなので、どうしてもアニメ系のグッズしか見つからない。
3件目で、なにか買っていた。
聞くと、招き猫のキーホルダーを買ったようだ。
アニメグッズよりはマシだろう。
ひとまず、これで土産騒動は終わった。
いや、終わっていなかった。
「電気街の大通りを歩きたい。」
えっ?腹ペコでクタクタなんだけど。
どうも、いろんな店が並んでいるから、いい土産が売っている店がありそうだと思ったのだという。
おそらく、そういう店は無いと思うけど…
ここまで来たら、トコトン彼の希望に沿おうと思った。
大通りを御徒町方面へ歩き出した。
彼は一生懸命に店を探すが、やはり希望に沿う店は見当たらないようだ。
ここまで来たら、もうどうしようもないので、そのまま御徒町まで歩いた。
ようやく御徒町に着き、レストランに入った。
海外営業が笑顔で迎えてくれた。
あとは、彼らでワイワイやってくれればいいだろう。
ようやく、今日の仕事を終えた気分になれた。