外国人と出張したある1日(4)
とりあえず、駅周辺でドラッグストアを探す。
一応、こちらは外国人を案内するホスト役なので、無下にはできない。
すると、駅の反対側にあった。
あって良かったのかどうか、よく分からなかった。
探していたものが見つかった嬉しさと、面倒が増えた残念な気持ちと、半々といえばいいだろうか。
彼は、咳を止めたいという。
なるほど、さっきの打ち合わせの時から咳き込んでいたので、しんどいのだろう。
急に彼を気遣ってあげたい気持ちになってきた。
ドラッグストアに入ろうとすると、彼は急にスマホを取り出した。
よくわからないドイツ語の単語を日本語に訳そうとしているようだ。
彼の母国では、この成分が入った咳止めがよく効くのだという。
まさか、成分まで指定されるとは思わなかった。
あと、1回分だけがドリンクタイプになっているのがいいという。
そんなこと言っている場合か?
ドラッグストアの薬剤師に、彼の希望をすべて伝える。
どうも、日本の咳止め薬には、アセチルサリチル酸は使われていないようだ。
ドリンクタイプも無いという。
仕方がないので、彼に説明して、普通の錠剤タイプの咳止め薬を買わせた。
かなり疲労を感じたが、この間、約5分だったようだ。
急いで駅に向かわなければ。
彼は、薬を入手できたせいか、安堵の表情を浮かべているように見えた。
彼のために手を尽くして良かった、と思った。
急に空腹感が蘇ってきた。
4時半の電車には無事に乗れた。
彼は、自販機で買ったオレンジジュースで咳止め薬を飲んでいた。
傷めた喉には刺激が強いような気もしたが、黙っていた。
車内では仕事の話をしていた。
しばらくすると、薬が効いたのか、咳はしなくなっていた。
まあ、薬が効いてよかったし、ホッとした。
これから御徒町まで移動だ。
海外営業が、予約したレストランで待っている。
今日はもう終わったも同然だ。
彼を御徒町まで連れていき、レストランでたらふく食べさせてもらおう。
やっと、気がラクになった。
もう自分の頭には、飯のことしか頭になかった。